一週間未満

毎週金曜日あたりにに更新します。未定です。

20年前に会った女の子のことを、いまだに思い出すのはきっと男の子だから。

 

憧れの女の子たちと飲みに行く日が決まった日のこと。

高校三年生の冬、部活が終わり、大学へ進学する友人と就職する友人が、それぞれの岐路に立っていた頃。

岐路に立ってるのに、女の子のことしか考えてなかった頃のこと。

 

彼女たちの露出した太ももや二の腕、膨らんだ胸に興奮していた僕ら。

彼女たちがマクドナルドへ行き、ポテトフライを一つ注文し、それを3人で食べ、ボールペンがテーブルから落ちる。それを見て彼女たちは大笑いする。彼女たちがそんな風にして笑うなんて、僕らは想像すらしていなかった。

僕らはマクドナルドへ行き、100円バーガーを一人20個注文し、店員の女性にスマイルくださいと言って大笑いしていた。

彼女たちと僕らは、大して変わらなかった。けれど、僕らは彼女たちは女神か何かだと感じていた。教室の机に座って、グラウンドを眺めながら話をする彼女たち。授業中、頬づえを立てて空を見たいは彼女たち。

付き合っていると噂になる男の子たちは、僕らとは違う世界で生きている。クールでかっこ良かった。部活の花形選手や少し悪いやつだった。

 

だからっていうと馬鹿みたいだけど、僕らは女の子と話す方法も知らなくて、目があえば目を伏せ、話しかけられたら作り笑いでその場を逃れることしか出来なかった。

花形選手じゃないし、悪いやつでもないから。

 

僕らだって、いつもくだらない話で大笑いしてたけど、ボールペンがテーブルから落ちるくらいの話はしてただろうから、今思えば、目を合わせて話すくらいはしておけばよかった。

付き合えたかとうかはまた別だけど、女の子たちと、少しは仲良くなれたかもしれない。

 

高校三年生の冬に部活を引退した僕は、憧れの女の子たちと飲むことになった。

もちろん、僕が誘ったわけじゃない。部活の元花形選手らセッティングしてくれた飲み会だった。僕はクールでかっこいいやつがモテると思って、言葉少なめに隣の女の子と話してたんだけど、気がついたら女の子たちは他の男の子たちといい感じになってた。別室に行った奴らもいた。

楽しそうに話すグループに入ることも出来ずに、テーブルに残ったビールを飲みながら、帰るタイミングを探していた。

いや、もうすぐに帰るべきだった。

だけど、帰らなかった。タイミングのせいにして、何かが起きると期待していたんだと思う。

結局、何も起きなくて、時間が過ぎて、本当にタイミングが分からなくなって、とりあえず、外に出た。冬だったけど大して寒いわけでもない。酔っ払いながら自転車に乗って、駅へ向かう。いつのまにか、鼻歌を歌ってて、誰もいない田舎の道に響いていた、ように感じた。

 

金曜日の夜に、会社の子たちと飲んだ。

なぜだか90年代に流行った歌をBGMにしてた。L↔︎Rの「Knokin' on your door」が流れて、隣に座ってた女の子が口ずさむ。

あの日、鼻歌を歌って帰った日、電車の中でいつまでも「アニョキニョアドア」と頭の中でリピート再生した。正確な発音なんか知らずに。

20年も前のことだけど、あの日いた女の子たちもきっと同じように「アニョキニョアドア」って歌ってたんじゃないかなって思った。会社の子みたいに。

 

土曜日は家族でコメダ珈琲へ行きシロノワールを食べた。

日曜日はボルダリングへ行った。