土曜日の朝、日曜日の朝
土曜日は風が強かった。
横浜のアンパンマンミュージアムへ行こうって家族で話をした。
予想はしてたけど、行ってみると子連れの家族でごった返してた。きっと、みんな昨日までの天気につられてきたんだと思う。僕らもそう。昨日までは。ずいぶんあったかくて、気分はもう夏だったから。
アンパンマンミュージアムへ行こうって話してたのは朝で、朝は晴れてた。行くことを決めた10時くらいから曇り始めて、思いのほか気温は上がらなくて、少し季節が逆戻りした感じ。
僕らは昼前に家を出て、下の子が眠りについたタイミングでご飯を食べようと思ってた。お金持ちってわけじゃないから、アミューズメントパークの中で食事なんかしないさってね。
だけど、上の子は空腹で発狂寸前。もうアンパンマンミュージアムって歳でもないのについてきてもらった手前、仕方がないから彼にだけ1000円もするハンバーガーを買うことにした。でもね、店では食べやしないぞってね。どうせ、でかい箱にちっさいのが入ってくるんだろうってね。でもさ、テイクアウト用の箱のを開けたら立派なハンバーガーが入ってた。まあ、1000円分の大きさはある。しかも美味しかった。こんなんなら、列に並んで家族で食べてもよかった。
それから、強風に吹かれながら昼食を探し求めて歩いた。下の子は一向に眠ろうとしないから、もう諦めてた。余計、アンパンマンミュージアムで食べたらよかったなって思いながら。なんて施設かも覚えてないけど、全然人通りのないビルの一階に飲食店の看板があった。安そうだよって妻が言ったから、安そうだねって店に入ると確かに安かった。
ただ、大して美味しくもなかった。家族みんなで食べたから楽しかったけど、1人で来てたら悲惨だったな。
教訓としては、アンパンマンミュージアムを侮るなかれ、だ。
昼食を食べ終え、また、強風に吹かれながらみなとみらいのマークイズまで歩いた。なんとなく買い物がしたかった。
買い物が嫌いな上の子は暇そうにしていて、僕らはぐるぐる歩き回り、紅茶ポットと茶色のズボンを買った。
桜木町の駅に着いたのは17時くらい。電車に乗って窓の外を見ると晴れ間が見えた。
なんか晴れてきたね、と妻に言うと、午後から晴れるって言ってたからね、と苦笑いして答える。
天気予報を信じすぎても良くない。
家に着いたのは18:00くらいかな。
翌日の日曜日は晴れた。日差しが強くて、真夏みたいに暑いんだろうなって思ったけど、天気予報じゃ気温は上がらないらしかった。
多摩川の海の方、会社の人たちとリレーマラソンに出場した。息子は1キロランをした。
子どもは3人来てた。5キロを走った女の子が息子の一つ上、何にも走らなかった男の子は二つ下。出会って30分くらいで親友みたいに遊んでた。
息ができなくなるくらい、走った。日差しは強かったけど、確かに気温は上がらなかった。走るにはちょうどよかったのかな。
何から逃げてるのか、何を追ってんのか。
小説とか読むと、薬やって、ダメになって、アル中になって、恋人と別れたり、セックスばかりしたり、そんなん多い。人間はどんなになっても人間なんかな、っていうペシニズムだよね。あの痛々しい感じ。あれが好きなんだけど、走るってそんな感じだ。
馬みたいに健康体で、アルコールなんかに溺れなくて、恋人との別れは、あってもなくても大なり小なりで、セックスなんかも大なり小なりで。でも、あれに似てる気がする。
まるで、僕らはどれだけ苦しんで死ねるのかを争ってるみたいだから。
生きるってそんなもんなのかな。
レースは信じられないくらい早く走れた。まだ、速くなれるんだって思うと、嬉しかった。
陽が傾くと気温は下がり、仲良くなった子達は、最後までバイバイを言い合ってた。
僕ら親子は、今日のご飯がカレーだって知って、それこそ、今日がこんなに素晴らしい日でいいのかって言いながら帰った。