それっぽい雰囲気がそれっぽい。まるで明日になれば今日がいなくなるみたいに
月曜日の朝はいつもより憂鬱で、いつもより少し遅く起きる。妻も子供二人はすでに起きていて、ご飯を食べている。
冷蔵庫からご飯と納豆を取り出す。レンジでご飯を温めている間、納豆を開けてかき混ぜる。納豆の匂いがすると次男は近寄ってくる。膝の上に座り、顔を見上げて笑う。納豆が好きなのだ。
一粒だけ箸でとり食べさせる。次男は満面の笑顔を見せる。それが楽しくて、結局ご飯の半分を次男に食べさせてしまう。
夜に渋谷にあるやまがたで、お酒を飲んだ。
山形出身の人と飲んだ。まだ、2度しかお会いしたことはないが、同じ山形出身ということで、いつか飲もうと話をしていた。それから、いつのまにか2年くらい経った。彼は今度本を出す。2作目の本だ。
「でも、ふりむいたら甘ったるく」。
持ってきたので読んで、と本をもらう。パラパラとお酒を飲みながらページをめくる。
今っぽい、という繊細さ。
あの空気感ってなんだろう。本当に今にしかない起きない繊細さ。瑞々しさの中にある残酷さや陰気な影。10代後半から20代前半までにしか得られないもの。それを過ぎると、安定や過激さが私たちを取り巻く。
35歳もとっくに過ぎた。あれがなんだったなのか。それが何かなんのか分からない。
だからっぽいよね、という。ことにする。
4月くらいにまた飲む約束をした。
仕事帰りに火曜日と木曜日に走る。
火曜日は恵比寿から溝の口までの12キロ。
木曜日は白金台から駒澤大学の8キロ。どちらも1キロ5分半くらいのペースだった。
水曜日と木曜日はボルダリングへ行く。
水曜日はB-Pump横浜で、木曜日はそらよん。腹筋が筋肉痛だったけど、調子は悪くなかった。ただ、何一つとして落とすことができず、意気消沈する。
もっと強くなろう。地味でもトレーニングを重ねようと決意する。
水曜日は渋谷の本屋をまわる。
MARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店、ナディッフモダン、啓文堂渋谷店、HMV books Tokyo shibuya 紀伊國屋書店西武渋谷店、あおい書店渋谷南口店、TSUTAYA SHIBUYA 。
ここのところ、本屋さんにお客さんがたくさん入っている気がする。とても嬉しい。
木曜日は東横線沿線をまわる。
中目黒蔦屋書店、ブックファースト自由が丘店、ヴィレッジヴァンガード自由が丘店、天一書房日吉店。
途中、学芸大学により、知人が立ち上げたコインランドリーを見に行く。カフェが併設されているから、今度遊びに行こう、と思う。
自由が丘には熊野神社があった。
故郷には、東北の伊勢と呼ばれる熊野大社がある。熊野大社の大例祭は7月25日で、その前の日に私は生まれた。全国の熊野神社を見つけると、必ず手を合わせる。まるで旧友に会ったみたいだった。
木曜日は春で、とても暖かかかった。
穏やかな日差し、とよくいうけど、本当に穏やかで座る場所があればすぐに座って空を見た。空は澄んでいて、乾いている。まだ冬なんだと思う。
通りには高校生や中年のおばさんや、スーツ姿の男性やらが行き交う。車が細い道を通り抜け、街を歩く人たちは、車を振り返る。クラクション、エンジン音、行き交う人たちの声。
雑踏の中の音が、ずっと鳴り響いていて止まない。
改札を抜けて、駅のホームへ向かう。急行電車がやってきて、それに乗る。電車は発車する。景色が流れ、視線を携帯電話に移す。
次はどこの本屋へ行こうかと考えている。